イラクに向かって移動

トルコの隣国イラク
1980年から1988年の間、戦闘が繰り広げられた
イラン・イラク戦争のイメージが強い
ちょうど自分が小学生の頃だ
遠くの国の話だったが強く怖く記憶に残っている。

他のバックパッカーやインターネットを見ると
イラクの入国にはビザを取得する必要があるが
北側のクルディスタン自治区は10日間のみなら
国境で発行されるスタンプで入国できるとの情報を得た。

ブログなどを見ると今年の8月に入国したとの情報もある
トルコまで来ているので是非イラクに入国したいと思い
帰国を1週間延ばしイラクに向かい出発した。

トルコ・イスタンブールからバスで21時間走りディヤルバクルの街へ行き
そこからイラク・クルディスタン自治区の首都エルビルへの
バスに乗り換えればイラクの入国が可能とのこと。

同じ経路にてノービザによるイラク入国を考えている人のため
最初に結果を言っておくと2011/10/07に入国を試みたところ
クルディスタン自治区であってもビザが必要で入国することはできなかった
その記録というか記憶を残しておきたい。


イスタンブールの大手バス会社METROの事務所でディヤルバクルのチケットを購入した。
80トルコリラ=約3200円。距離にして1000kmの距離だ。

バス会社のスタッフに「何しに行くんだ?」と聞かれる。
「ディヤルバクルからイラクに入るんだよ」と言うと、なるほどという顔をしてチケットを発行してくれた。

翌日、トラムと地下鉄を乗り継いで、イスタンブールのバスターミナル(オトガル)へ移動、そこからディヤルバクル行きのバスに乗車する。
13:00定刻に問題なく出発。21時間後にはディヤルバクル、25時間後にはイラク入国の運びとなるはずだった。

途中、何回かトイレ休憩が入る。21時間の長いバスの旅、ドライブインで停車。トイレに軽食、土産物が置いてある
ブルガリアのソフィアにバスで移動したときにも書いたが、日本のドライブインに来たかのような錯覚に陥る。平積みにされたお菓子の箱
しかも、配りやすいように小分けにされている。「トルコに行ってきました」と箱に書いてあっても不思議には感じない。

日が落ち周りが暗くなる……。

それでもバスは夜通しディヤルバクルに向かって進む。
寝て起きて寝て起きてを繰り返して朝の6時になっていた、窓の外では太陽が昇り始めている。

道路標識にも「Diyarbakir」の文字が見え始め……

2時間後の朝8時に、ディヤルバクルのバスターミナル(オトガル)に到着した。

とても綺麗で新しいバスターミナル内で最終目的地・イラク:エルビルのバスチケットを探す。
バス会社が集まっている一角で「イラク:エルビルに行きたい」と言ったら、すぐに見つかった。ディヤルバクルからイラク:エルビルまで70トルコリラ=約2800円。

「10:30の出発だよ」とトルコ語で言われた気がする。
お礼を言って、バスの発着所で待つ、30分ほど待っていたらイラク:エルビル行きのバスがやってきた。側面には「International Travel」と書いてある。
ついに国境を渡りイラクに入国するのかと気分が高まる。

指定の席に座り、定刻10:30を少し過ぎた辺りでバスが動き出した
ディアルバルクまでのバスと同じように途中休憩を挟み、トルコ側国境の町シロピに到着、そのままバスは国境に向かう。


トルコ側国境出入国管理事務所

乗用車やトラック、バスが列をなして出国を待っている。
乗務員にパスポートを渡し免税店で待つ、1時間程で全員の出国手続きが終了したようだ。
バスのクラクションが鳴らされ、全員集合。
バス内で名前を呼ばれパスポートが返される。自分も名前を呼ばれるのかなと思っていたら「ジャパニーズ!」と言われ、席まで持ってきてくれた、ありがとう。
手の中のパスポートには、今日の日付のトルコ出国スタンプが押してある。

バスはゆっくりとトルコ・イラク国境の橋を渡り数分でイラク側出入国事務所へ。
全員バスを降ろされパスポートコントロールでパスポートを管理官に渡し待つ。

30分後同じバスの他の人が呼び出され、パスポートを受け取る中、自分はなかなか呼ばれないその時はちょっと心配だなぁくらいにしか思っていなかったが、「KEI!」自分の名前が呼び出された。急いで管理官の所に行くと「ビザで問題がある」と一言。

クルディスタン自治区はビザなしで入国可能と聞いてきた」と説明しても首を横に振るだけ
しばらく待たされて、再度呼び出される。「これではイラクに入国できないのか」と聞くと「そうだ、アンカラに行ってイラクビザを取ってきなさい」の一言。

結局、イラクビザが必要という事は変わらなかった。乗務員と一緒に戻り、バックパックを降ろしてお詫びをし、ここでバスとはお別れになった。
エルビルまで向かうバスが小さくなって見えなくなった。


……さて、感傷に浸っている暇の無い。
状況としてはトルコを出国したがイラクに入国できず、記録的には世界中のどこにも存在していないことになっている。これ以上ない究極の宙ぶらりんな状態。
まずはトルコに戻ろうトルコに向かって歩き始めるが、荷物チェックを受け、その後トルコへの橋に差し掛かったところで迷彩服のイラク軍の軍人さんに呼び止められる。
「イラクビザがないので入国できませんでした、トルコに帰ります」と伝えパスポートを渡す。
リーダのような軍人さんがパスポートをチェックする。その間、不安が顔に出ていたためか、横の若い軍人さんが、微笑みながらこっちに近づいてきてくれ、私のほっぺたをぷにぷにとつまんだおかげでなんだが緊張がちょっと解けた気がする。

数分後パスポートが帰ってきて、兵隊さんにお礼とお詫びをして国境の橋を歩いて渡る。
写真には撮ることができなかったが下に川が流れ、のんびりとした風景が広がっている。
振り返ってイラク側を見ると水平三色旗で上から赤色、白色、緑色の中央に21本の光を放つ黄色の太陽が描かれているクルディスタンの旗と、水平三色旗で上から赤色、白色、黒色の中央に「アッラーフ・アクバル(アッラーフは偉大なり)」と記されたイラクの旗が並んではためいていた。

とりあえず記録には残っていないが記憶ではイラクに入ることができた様だ。

イラクに入って、すぐに戻った軌跡

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